チョココラム

妊婦の体力作りは「家事」でもOK!運動不足を解消して安産を目指す「おうち運動」5選と注意点【医師監修】

妊娠生活は、喜びや期待に満ち溢れている一方で、自分自身の体や心の変化に戸惑う日々の連続でもあります。特に妊娠中期から後期にかけて、お腹が目に見えて大きくなってくると、多くの妊婦さんが共通の悩みに直面します。それは、「体重管理」と「運動不足」に対する強烈なプレッシャーです。

健診のたびに体重計に乗るのが怖い。「体重が増えすぎているから、もっと歩きなさい」と医師や助産師に指導され、頭では分かっているのに、重たい体を動かすのが億劫で仕方がない。SNSを開けば、キラキラとしたマタニティライフを送るインフルエンサーがヨガをしている姿が目に入り、「私なんて、今日一日ソファでゴロゴロしてしまった…」と自己嫌悪に陥る——。そんな経験はありませんか?

まず、あなたに一番にお伝えしたいことがあります。それは、あなたが感じているその「しんどさ」は、決して怠け心から来るものではないということです。妊娠中、あなたの体内では、赤ちゃんという新しい命を育むために、血液循環量が増え、ホルモンバランスが劇的に変化し、重心の位置さえも変わっています。体が「休みたい」と訴えるのは、エネルギーを赤ちゃんの成長に使っている証拠であり、生物として極めて正常な反応なのです。

しかし、同時に私たちが出産というゴールを見据えたとき、直視しなければならない現実があります。それは、出産が「全治数ヶ月の交通事故」や「フルマラソン」に例えられるほど、肉体的にも精神的にも過酷な大仕事であるという事実です。

出産は「体力勝負」の総力戦

分娩台の上で何時間、時には何十時間と続く陣痛の波。その痛みに耐え、呼吸を整え、最後には全身の力を振り絞っていきむ。このプロセスを完遂するために必要なのは、精神論ではなく、物理的な「体力」と「持久力」です。

研究によれば、妊娠中に適切な運動習慣を持っていた女性は、そうでない女性に比べて分娩所要時間が短縮される傾向にあり、帝王切開や器械分娩のリスクがわずかに低下するというデータもあります。つまり、妊娠中の体力作りは、単なるダイエットではなく、あなた自身と赤ちゃんが安全に、そして少しでも楽にお産を乗り越えるための「最強の安産祈願」なのです。

「ジム通い」も「激しいスポーツ」もいらない

「体力作り」と聞くと、スポーツジムに通ったり、毎日何キロもランニングしたりといった、ハードなトレーニングを想像されるかもしれません。しかし、今のあなたに必要なのは、そのようなアスリート並みの負荷ではありません。

今回ご提案するのは、「今の生活の中に、ほんの少しのプラスαを加える」というアプローチです。

わざわざ着替えて外に出なくてもいい。特別な道具もいらない。家事のついでや、テレビを見ている隙間時間にできる「おうち運動」で十分なのです。むしろ、妊娠中のデリケートな体には、激しい運動よりも、日常の動作を意識的に行う「低強度の活動」の積み重ねの方が、安全かつ継続しやすいというメリットがあります。

この記事では、医学的エビデンスと専門家の知見に基づき、運動が苦手な「ズボラさん」でも今日から実践できる体力作りの方法を徹底的に解説します。読者の皆様が抱える「運動不足への罪悪感」を払拭し、「これなら私にもできそう!」と前向きな一歩を踏み出せるよう、心を込めてお届けします。


なぜ必要?妊婦が体力作りをする3つのメリット

「運動したほうがいい」と漠然と言われるよりも、それが具体的にどのようなメカニズムで安産や赤ちゃんの健康につながるのかを理解する方が、モチベーションは上がります。ここでは、医学的・生理学的な観点から、妊婦さんが体力作りをするべき3つの理由を深掘りします。

お産が軽くなる?「安産」と筋肉の関係

「安産」の定義は人それぞれですが、医学的には「母児ともに健康で、経膣分娩がスムーズに進行すること」が一つの指標となります。このスムーズなお産を実現するために、筋肉はエンジンのような役割を果たします。

1. 分娩の進行を助ける「推進力」としての腹筋・骨盤底筋

お産の主役は子宮の収縮(陣痛)ですが、赤ちゃんを産道から外の世界へと押し出す最後のひと押し、つまり「娩出力」を担うのは、お母さんの腹圧(いきむ力)です。腹筋や骨盤底筋群が適切に維持されていると、陣痛の波に合わせて効率よく力を込めることができ、赤ちゃんがスムーズに降りてくるのを助けます。逆に、筋力が極端に低下していると、いきむ力が弱く、分娩の第2期(子宮口全開大から誕生まで)が長引いてしまう可能性があります。

2. 長丁場を乗り切る「心肺機能」と「持久力」

初産婦さんの場合、陣痛開始から出産までの平均所要時間は12〜15時間と言われています。この間、体は絶えずエネルギーを消費し続けます。日頃から有酸素運動を取り入れ、心肺機能を維持しておくことは、酸素を効率よく体内に取り込み、長時間動いてもバテにくい「スタミナ」を養うことにつながります。体力が残っていれば、陣痛の合間にリラックスする余裕も生まれ、パニックにならずにお産に向き合うことができるでしょう。

3. 産道を広げる「柔軟性」

体力作りは筋力トレーニングだけではありません。ストレッチやヨガなどで股関節周りの筋肉や靭帯を柔らかく保つことも極めて重要です。産道(赤ちゃんの通り道)の周囲にある筋肉がガチガチに硬いと、赤ちゃんの下降を妨げる抵抗になってしまいます。股関節の柔軟性を高めることで、分娩時の体位(足を開く姿勢)が楽にとれるようになり、会陰の伸びも良くなるため、会陰切開や裂傷のリスク軽減も期待できます。

急激な体重増加を防ぎ、難産リスクを下げる

「体重管理」は耳にタコができるほど言われる言葉ですが、これは単に「太ると産後の体型戻しが大変だから」という美容的な理由だけではありません。過剰な体重増加は、お産の安全性そのものを脅かすリスクファクターになり得るからです。

1. 産道への脂肪沈着(軟産道強靭)

骨盤の中、つまり赤ちゃんが通るトンネルの内壁に脂肪がつくと、物理的に通り道が狭くなってしまいます。これを「産道への脂肪沈着」といい、難産や帝王切開のリスクを高める要因となります。適度な運動でエネルギーを消費し、必要以上の脂肪蓄積を防ぐことは、赤ちゃんのための「脱出ルート」を確保することに直結します。

2. 妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の予防

妊娠中の急激な体重増加は、「妊娠高血圧症候群」や「妊娠糖尿病」のリスクを著しく上昇させます。

  • 妊娠高血圧症候群: 高血圧により胎盤の血流が悪くなり、赤ちゃんの発育不全や胎盤早期剥離などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
  • 妊娠糖尿病: 高血糖状態が続くと、赤ちゃんが巨大児になりやすく、難産のリスクが高まります。

有酸素運動には、血管の内皮機能を改善して血圧を安定させたり、インスリン感受性を高めて血糖値をコントロールしやすくしたりする効果があることが、数多くの研究で実証されています。運動は、これらの合併症を予防するための「天然の薬」とも言えるのです。

産後の回復スピードとメンタル安定に直結する

体力作りは「出産のため」だけのものではなく、その後に待っている「育児」という新たな戦いのための準備でもあります。

1. 産後の回復力(床上げの早さ)

出産で負ったダメージからの回復には、良好な血流が必要です。筋肉量があり、血行が良い人は、傷ついた組織(子宮や会陰など)に酸素や栄養が届きやすく、回復が早い傾向にあります。また、妊娠中から骨盤底筋を鍛えておくことで、産後の多くの女性を悩ませる「尿漏れ」や「子宮脱(臓器脱)」のリスクを軽減し、QOL(生活の質)を早期に取り戻すことができます。

2. メンタルヘルスと育児への余裕

赤ちゃんが生まれると、3kg以上の重りを抱っこし、授乳やおむつ替えで頻繁に立ち座りを繰り返す生活が始まります。これには相当な足腰の強さが求められます。

また、運動には「セロトニン」や「エンドルフィン」といった、心を安定させ幸福感をもたらす神経伝達物質の分泌を促す作用があります。妊娠中から運動習慣を持つことは、不安やストレスを解消し、産後うつ(マタニティブルーズ)の予防にも役立つという研究報告があります。

「体力が残っていれば、心にも余裕が生まれる」。これは育児における真理です。今のうちに貯金(体力)を作っておくことは、未来のあなた自身を助けることになるのです。


ズボラさんでも続く!「運動不足」を解消するおすすめ体力作り【自宅編】

「外に行く準備をするのが面倒」「雨の日は一歩も外に出たくない」。そんな気持ち、痛いほどわかります。

でも安心してください。効果的な運動をするために、必ずしも外に出る必要はありません。家事の延長や、リラックスタイムのついでにできる「ながら運動」でも、継続すれば十分な効果が得られます。ここでは、特にズボラさんでも続けやすい、自宅でできる3つのメニューを厳選しました。

テレビを見ながらできる「マタニティヨガ・ストレッチ」

最もハードルが低く、リラックス効果も高いのがストレッチです。特に妊娠後期は、大きくなったお腹を支えるために腰や背中の筋肉が緊張し続けています。お風呂上がりや寝る前、テレビを見ながらの隙間時間に、凝り固まった体をほぐしてあげましょう。

おすすめ:股関節を柔軟にする「合せき(がっせき)のポーズ」

このポーズは、骨盤周りの血流を劇的に改善し、股関節の柔軟性を高めるため、「安産のポーズ」として広く知られています。

【実践!ステップ・バイ・ステップ】

  1. 準備: 平らな床の上で行います。お尻の下にクッションや座布団を敷くと、骨盤が立ちやすくなり楽に行えます。
  2. 姿勢: あぐらをかくように座り、両足の裏を合わせます。かかとをできるだけ自分の方(股間)に引き寄せます。
  3. 把持: 両手で足の指先や足首を優しく包み込むように持ちます。
  4. 動作: 背筋をスッと伸ばし(ここが重要!猫背にならないように)、膝を床に向かって優しくパタパタと上下に揺らします。蝶々が羽ばたくようなイメージです。
  5. 呼吸: ゆったりとした深い呼吸を続けながら、30秒〜1分ほど行います。
  6. 深める: 余裕があれば、息を吐きながらゆっくりと上半身を前に倒し、股関節の伸びを深めます。お腹を圧迫しないよう注意してください。

【ここがポイント!】

  • 無理は禁物: 膝が床につかなくても全く問題ありません。大切なのは「痛気持ちいい」範囲で股関節が伸びている感覚です。
  • ながらでOK: テレビのCM中だけやる、ドラマのオープニングだけやる、といった「ついで」の習慣にするのが継続のコツです。

掃除が筋トレに変わる!「雑巾がけ・窓拭き」

「運動しなきゃ」と意気込むと疲れますが、「部屋をきれいにするついでにカロリーも消費しよう」と考えれば、家事も立派なエクササイズになります。実は、昔ながらの掃除方法は、妊婦さんの体にとって理にかなった動きを含んでいるのです。

1. 骨盤ケアにもなる「四つん這いでの雑巾がけ」

昔から「雑巾がけは安産に良い」というジンクスがありますが、これには助産師さんも認める根拠があります。

  • 姿勢のメリット(除圧効果): 四つん這い(猫のポーズに近い姿勢)になることで、重たい子宮が腹壁側に下がり、背骨や腰への圧迫から解放されます。腰痛持ちの妊婦さんには特におすすめです。
  • 赤ちゃんの回旋を助ける: 四つん這いでお尻を少し高くする姿勢は、骨盤内のスペースを広げ、赤ちゃんが骨盤にはまるための正しい位置(回旋)に移動するのを助けると言われています。逆子体操の原理にも似ており、赤ちゃんのポジショニングに有効です。
  • 全身運動: 腕で体重を支え、脚で踏ん張って進む動作は、上半身と下半身をバランスよく鍛える全身運動になります。

【注意点】

お腹が大きすぎるとバランスを崩しやすいので、ゆっくりとした動作で行ってください。膝が痛い場合は、膝当てや厚手のタオルを敷きましょう。

2. 肩甲骨をほぐす「窓拭きエクササイズ」

窓拭きや高いところの拭き掃除は、腕を大きく上げたり、左右に大きく動かしたりする動作が含まれます。これが肩甲骨周りの筋肉(僧帽筋や菱形筋)をダイナミックに動かします。

妊娠中は乳腺の発達や姿勢の変化により、どうしても肩こりや巻き肩になりがちです。肩甲骨を意識して動かすことで、胸郭が開き、呼吸が深くなるとともに、産後の授乳に向けた「おっぱい体操(乳房基底部のマッサージ効果)」としても機能します。

下半身を強化する「マタニティスクワット」の正しいやり方

「スクワット」と聞くと、重いバーベルを持って行うハードな筋トレを想像するかもしれませんが、ここで紹介するのは妊婦さん向けにアレンジされた、安全かつ効果的なメソッドです。下半身の大きな筋肉(大腿四頭筋、大殿筋)を鍛えることは、大きなお腹を支える土台作りと、分娩時の持久力アップに直結します。

【重要:安全第一のルール】

妊娠中はホルモンの影響で関節が緩んでおり、重心も変化してバランスを崩しやすい状態です。必ず、安定した椅子やテーブル、壁に手をつかまって行ってください。転倒は絶対に避けなければなりません。

【マタニティスクワット・完全ガイド】

  1. セットアップ: 椅子の背もたれやテーブルに両手を添えて立ちます。足は肩幅よりも少し広めに(腰幅の1.5倍程度)開き、つま先は外側(45度くらい)に向けます。
  2. 下降フェーズ: 息を「フゥーッ」と吐きながら、ゆっくりと腰を落としていきます。「後ろにある透明な椅子に座る」ようなイメージでお尻を後ろに突き出します。
    • チェックポイント: 膝がつま先よりも前に出ないようにしましょう(膝への負担を防ぐため)。
    • 深さ: 太ももが床と平行になる手前くらいまでで十分です。深くしゃがみこむ必要はありません。
  3. 上昇フェーズ: 息を吸いながら、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。膝を完全に伸ばしきらず(ロックせず)、少し曲げた状態で止めると、筋肉への負荷が抜けずに効果が持続します。
  4. 回数とセット数: 1セット10回程度を目安に。体調に合わせて1日1〜3セット行います。「きつい」と感じたら回数を減らしても構いません。

【得られるメリット】

  • 骨盤底筋の強化: 出産時の産道の伸びを良くし、産後の尿漏れ予防になります。
  • 安産力アップ: 骨盤周りの血流を強力に促し、お産をスムーズにする土台を作ります。
  • むくみ解消: 「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎや太ももの筋肉ポンプを活性化させ、下半身のむくみを劇的に改善します。

気分転換に最適!外でできる妊婦の体力作り【外出編】

家の中に閉じこもっていると、どうしても気分が塞ぎがちになります。天気の良い日は、思い切って外の空気を吸いに行きましょう。日光を浴びてセロトニンを分泌させることは、メンタルヘルスの観点からも非常に重要です。

基本にして最強!「ウォーキング」の効果的な歩き方

ウォーキングは、特別な道具も技術もいらない、妊婦さんにとって最も手軽で、かつ効果の実証された有酸素運動です。しかし、ただ漫然と歩くのではなく、いくつかのポイントを押さえることで、その効果と安全性は何倍にも高まります。

ポイント具体的なアドバイス
姿勢妊娠中はお腹の重みで「反り腰」になりがちです。これは腰痛の元凶です。頭のてっぺんから糸で吊るされているイメージを持ち、背筋を伸ばしましょう。お腹を少し持ち上げるように意識すると、骨盤底筋も使われます。
ペース息が切れるほどの早歩きはNGです。「ニコニコペース(隣の人と笑顔で会話ができる強度)」が脂肪燃焼にも心肺機能向上にも最適です。
時間長ければ良いというものではありません。1日20〜30分程度が目安です。疲れを感じたらすぐにベンチなどで休憩しましょう。
靴選びクッション性が高く、履き慣れたスニーカーを選びましょう。靴紐が解けないタイプや、着脱しやすいものが便利です。
タイミング体調が安定しやすく、気温も適度な午前10時〜午後2時頃がおすすめです。暗い時間の歩行は転倒リスクがあるため避けましょう。
効果的なウォーキングのポイント

【必須!お出かけ持ち物リスト】

  • 母子健康手帳(外出時は絶対に携帯してください!)
  • 健康保険証・診察券
  • 携帯電話(緊急連絡先を登録済み)
  • 水分補給用の飲み物
  • 小銭(タクシー代や自販機用)
  • 生理用ナプキン(破水や出血に備えて)

「今日はあのパン屋さんまで行こう」「公園の桜を見に行こう」といった小さな楽しみを目的地に設定すると、義務感が薄れ、楽しく続けられます。

浮力で負担減!「マタニティスイミング」

「お腹が重くて、歩くとすぐに腰や膝が痛くなる…」「夏場のウォーキングは暑くて無理…」という方に特におすすめなのが、マタニティスイミング(または水中ウォーキング)です。

水中運動ならではのメリット

  1. 浮力の恩恵(関節への負担減): 水中では浮力が働くため、体重による負荷が陸上の約1/10になります。お腹の重さを感じずに手足を自由に動かせるため、腰痛や膝痛がある妊婦さんでも無理なく運動できます。
  2. 水圧による「むくみ解消」効果: 水深1メートルでは、足にかなりの水圧がかかります。この圧力が、血管やリンパ管を外側から圧迫し、滞っていた血液や水分を心臓へと押し戻すポンプ作用を助けます。妊娠中の頑固な「むくみ」に対して、劇的な解消効果が期待できます。
  3. 体温調節とリラックス: 適度な水温(30℃前後)は、運動による体温上昇を抑え、熱中症のリスクを下げます。また、水に漂う感覚は副交感神経を優位にし、高いリラックス効果をもたらします。

【注意点】

  • 感染症対策: 多くの人が利用するプールでは、結膜炎などの感染症リスクがあります。水質管理が徹底されている施設を選び、運動後はシャワーでしっかり体を洗い流しましょう。
  • 冷え対策: 水中に長時間いると体温が奪われます。1回45分〜60分程度を目安にし、上がった後はすぐに水気を拭き、髪を乾かして温まりましょう。
  • 滑りやすさ: プールサイドや更衣室は非常に滑りやすいです。移動は慎重に。

※多くのスポーツクラブやスクールでは、産婦人科医の診断書許可証の提出が必須となっています。事前に確認しましょう。

階段の上り下り(昇降運動)はいつから有効?

「臨月に入ったら階段昇降をするといい」と聞いたことはありませんか? これは事実ですが、実施する「時期」と「やり方」を間違えると危険です。

【いつから始める?】

基本的には正産期(妊娠37週以降)に入り、いつ赤ちゃんが生まれても良い状態になってから積極的に行うのがおすすめです。それ以前(特に切迫早産の傾向がある場合)に行うと、早産のリスクを高める可能性があるため控えましょう。

【なぜ効果があるの?】

階段の上り下り、特に「股関節をしっかり曲げて足を高く上げる」動作は、骨盤を大きく動かし、赤ちゃんの頭が骨盤内に入り込む(下降する)のを物理的に促します。この刺激が子宮収縮を誘発し、陣痛につながる効果があるとされています。

【安全に行うための鉄則】

  • 「上り」メインで: 下り階段は足元が見えにくく、転倒のリスクが非常に高い上、膝への衝撃も大きいです。「エレベーターで降りて、階段で上る」という使い方が最も安全でおすすめです。
  • 手すりは命綱: バランスを崩した時に備え、必ず手すりのある階段を使い、常に手すりに触れるか、すぐに掴まれる距離を保ちましょう。誰もいない非常階段などは避け、人の目がある場所を選んでください。

妊娠時期別!体力作りのスケジュールと運動強度

妊娠期間は、週数によって体の状態やリスクが大きく異なります。「できること」と「避けるべきこと」を正しく理解し、時期に合わせたスケジュールを組みましょう。

時期お腹と体の状態運動の強度・目安おすすめの運動・活動
妊娠初期
(〜15週)
つわり・不安定期
胎盤が未完成で流産リスクが高い時期。つわりで体調不良になりやすい。
【現状維持・休息優先】
無理に運動を始める必要はありません。体調が良い時に気分転換の散歩をする程度で十分です。「動かなきゃ」と焦らないこと。
・散歩(体調が良い時)
・軽いストレッチ
・日常生活(家事)
妊娠中期
(16週〜27週)
安定期
胎盤が完成し、つわりが落ち着く。食欲が出て活動的になれる時期。
【積極的な体力作り】
最も動けるゴールデンタイムです。週2〜3回、1回30〜60分程度の有酸素運動を目指しましょう。心拍数は150bpm以下を目安に。
・ウォーキング
・マタニティスイミング
・マタニティヨガ
・マタニティビクス
・スクワット
妊娠後期
(28週〜36週)
お腹急増期
お腹が前にせり出し、バランスが悪くなる。動悸や息切れがしやすくなる。
【マイペース・メンテナンス】
運動強度を少し落とし、柔軟性や呼吸法を重視します。お腹の張りには敏感になりましょう。
・拭き掃除(肩甲骨)
・ストレッチ(股関節)
・呼吸法練習
・軽いウォーキング
正産期
(37週〜)
出産準備完了
いつ生まれてもOK。陣痛を待つ時期。
【ラストスパート】
医師の許可のもと、陣痛を促すための運動を取り入れます。破水に備えた準備も忘れずに。
・スクワット
・階段昇降(上り)
・雑巾がけ
・ウォーキング(距離を延ばす)

妊娠初期(〜15週):無理は禁物!体調優先の時期

この時期は、赤ちゃん(胎芽)の器官形成期であり、非常にデリケートな時期です。つわりで水分や食事がとれていない場合、運動は脱水を助長し危険です。

「食べられる時に食べ、動ける時に少し動く」くらいでOKです。激しいスポーツは避け、心身のストレスを溜めないことを最優先にしましょう。

妊娠中期(16週〜27週):安定期に入ったら積極的に動こう

いわゆる「安定期」に入ります。つわりも落ち着き、食欲が出てくる人が多いですが、これは同時に体重が急増しやすい時期でもあります。

医師の許可を得た上で、マタニティスイミングやヨガなどの教室に通い始めるのにも最適なタイミングです。少し汗ばむくらいの有酸素運動を取り入れ、基礎体力を底上げしましょう。

※注意点:仰向け(上向き)で寝る姿勢を長時間続ける運動は、大きくなった子宮が下大静脈を圧迫し、「仰臥位低血圧症候群(気分が悪くなる)」を引き起こすリスクがあるため、避けるか短時間に留めてください。

妊娠後期(28週〜):お腹の張りに注意しながら「出産準備」へ

お腹が大きく重くなり、足元が見えにくくなります。ホルモンの影響で靭帯が緩んでいるため、捻挫もしやすくなっています。

この時期の目標は、筋力アップというよりも「お産に向けた体のメンテナンス」です。股関節を柔らかくするストレッチや、分娩時にパニックにならないための呼吸法の練習に重点を置きましょう。

37週を過ぎて正産期に入ったら、医師と相談しながら、ウォーキングの距離を延ばしたり、スクワットや階段昇降を積極的に取り入れて、陣痛を待つ体勢を整えます。


絶対に守って!妊婦が運動する際の5つの注意点

どんなに体に良い運動でも、安全が確保されていなければ本末転倒です。あなたとお腹の赤ちゃんを守るために、以下の5つのルールを必ず守ってください。

医師の許可をとってから始める

これが最も重要です。自己判断で運動を始めないでください。

「運動しても良いですか?」「どのような運動なら大丈夫ですか?」と、必ず妊婦健診の際に主治医に確認しましょう。

特に、以下の条件に当てはまる場合は、運動が制限または禁止されることが一般的です。

  • 絶対安静が必要なケース: 切迫流産・切迫早産の兆候がある、子宮頸管無力症、持続する出血、前置胎盤、破水している場合など。
  • 慎重な判断が必要なケース: 妊娠高血圧症候群、多胎妊娠(双子など)、重度の貧血、心疾患などの合併症がある場合。

「経過は順調だから、軽い運動ならOKだよ」というお墨付きをもらってからスタートするのが鉄則です。

お腹が張ったら即中止!休憩のサイン

運動中に以下のようなサインがあったら、すぐに運動を中止して休憩してください。これらは体からの「SOS」です。

  • お腹が張る: お腹がカチカチに硬くなる、生理痛のような痛みがある。
  • 出血: 少量でも出血があった場合は即中止。
  • 体調不良: めまい、ふらつき、頭痛、息切れ、吐き気。
  • 胎動の変化: 胎動を感じなくなった、あるいは急激に減ったと感じる。

「もう少しで目標達成だから」と無理をしてはいけません。お腹の張りは「赤ちゃんが苦しいよ」「ママ、休んで」というサインです。休憩しても張りが治まらない場合や、規則的な痛み、出血がある場合は、迷わずかかりつけの産院に連絡してください。

転倒リスクのある運動・激しい有酸素運動はNG

妊娠中に行ってはいけないスポーツ(禁忌種目)があります。

  • 転倒・接触の危険があるもの: スキー、スノーボード、スケート、自転車(バランスを崩しやすい)、乗馬、バスケットボール、サッカー、柔道など。これらは腹部への衝撃リスクが高すぎます。
  • 激しすぎるもの: 心拍数が上がりすぎる(目安として150bpm以上)、息が切れて会話ができないレベルの運動。胎盤への血流が減少する恐れがあります。
  • 腹圧がかかりすぎるもの: 重いバーベルを持つウエイトリトレーニング、激しい腹筋運動など。
  • 特殊な環境: スキューバダイビング(胎児への減圧症リスク)、高地トレーニング(低酸素リスク) 。

水分補給と服装選び(冷え対策)

妊婦さんは代謝が上がっており、平熱も高く、汗をかきやすくなっています。脱水症状になると血液がドロドロになり、血栓ができやすくなるほか、子宮収縮(お腹の張り)を引き起こす原因にもなります。

運動前・中・後は、「喉が渇いた」と感じる前にこまめに水分を補給してください。スポーツドリンクを薄めたものや麦茶がおすすめです。

また、体を冷やさないことも大切です。吸汗速乾性のある素材を選びつつ、お腹や腰が出ない服装を心がけましょう。冬場の屋外運動では、首・手首・足首の「3つの首」を冷やさないように注意です。

真夏や真冬は「室内」を選択する勇気

日本の夏は高温多湿で過酷です。炎天下でのウォーキングは、熱中症のリスクだけでなく、母体の深部体温上昇が赤ちゃんに悪影響(催奇形性など)を及ぼす可能性があります。

「毎日歩かなきゃ」という真面目さがアダになることもあります。猛暑日や、路面凍結の恐れがある冬の日は、無理に外に出ず、エアコンの効いた室内でストレッチや掃除をする勇気を持ってください。環境に合わせて柔軟にメニューを変えるのも、賢いママの選択です。


どうしても動けない時は?運動不足の罪悪感を消す考え方

体調が悪かったり、どうしてもやる気が起きなかったりする日もあるでしょう。そんな時に「今日も何もできなかった…」と自分を責める必要は全くありません。発想を転換しましょう。

家事や入浴も立派なカロリー消費(NEATの考え方)

「運動(Exercise)」として特別な時間を設けなくても、日常生活の中での活動で消費されるエネルギーのことをNEAT(非運動性活動熱産生)と呼びます。これを意識するだけで十分です。

  • お風呂掃除: 浴槽を洗うために屈んだり腕を動かしたりする動作は、立派な全身運動です。
  • 洗濯: 重い濡れた洗濯物を持ち上げ、高い竿に干す動作は、スクワットと腕のストレッチの複合運動です。
  • 入浴: 38〜40℃程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かる(10分程度)だけでも、血流が良くなり、代謝が上がってカロリーを消費します。

「今日は掃除機をかけたからOK!」「買い物でスーパーの中を2周したから立派なウォーキング!」と、自分の行動をポジティブに変換してあげましょう。

「呼吸法」の練習だけでもお産に役立つ

ベッドから起き上がるのもしんどい時は、寝たままできる「呼吸法」の練習をしましょう。

深くゆっくり息を吸い、長く吐く。この腹式呼吸の練習は、副交感神経を優位にしてリラックス効果があるだけでなく、分娩時の痛み逃し(ソフロロジー法やラマーズ法)の予行演習になります。

「動けない時は、呼吸の筋トレをしている」と考えれば、罪悪感は消えるはずです。赤ちゃんに酸素をたっぷり届けてあげるイメージで行いましょう。


頑張った日には甘いご褒美を。妊婦さんに「ホワイトチョコレート」がおすすめな理由

「運動しなきゃ」と頑張った日も、思うように動けなかった日も、最後は自分を労ってあげることが妊娠生活を続けるコツです。そんな時の「心のご褒美」として、実はホワイトチョコレートが妊婦さんに最適であることをご存知ですか?

特にお勧めしたいのが、私たちが作っているandewホワイトチョコレートです。

andewが初めて作ったホワイトチョコレート。ひとくちで、ミルクのリッチなコクとまろやかな甘みがふわりと香ります。

このandewホワイトチョコレートには、妊娠中に嬉しい3つのポイントがあります。

①ノンカフェイン

パクパク食べるとすぐにカフェインの基準量を上回ってしまう…なんて話もありましたが、andewホワイトチョコレートはノンカフェイン。コーヒーや紅茶と一緒に食べてリラックスする時にも安心です。

② 豊富な栄養

andewの他商品同様、完全栄養食を実現するためにカカオ、アーモンド、チアシード、きなこ、ココナツ、ケシの実、昆布、抹茶など、栄養豊富な素材を絶妙なバランスで組み合わせました。

③ 妊娠中の友達へのプレゼントにも

丁寧に梱包し、パンフレットとメッセージカードとともにお届けします。領収書などお値段のわかる書面は同封しませんので、贈り物にぴったりです。

妊娠中のご褒美に、ぜひお試しください!


おわりに

妊娠中の体力作りは、決して「自分を追い込むトレーニング」ではありません。

それは、これから迎える出産という大仕事と、その後に待っている赤ちゃんとの生活を、笑顔で乗り切るための「体と心の準備体操」です。

今日ご紹介した中で、一つでも「これならできそう」と思えるものはありましたか?

テレビを見ながらの足パカストレッチでも、買い物のついでに少し遠回りすることでも、トイレ掃除を念入りにすることでも構いません。

「今日、少しでも体を動かせた自分」を、まずは褒めてあげてください。

その小さな積み重ねが、確かな体力となり、あなたと赤ちゃんの安産を支える大きな力になります。

もし疲れたら、堂々と休んでください。そしてまた明日、気が向いたら少し動いてみてください。無理せず、焦らず、赤ちゃんと相談しながら、あなたらしいペースで素晴らしい出産当日を迎えてくださいね。心から応援しています!

参考

  • この記事を書いた人

andew magazine 編集部

世界一やさしいチョコレート andew magazine編集部です。メンバーボイスやお知らせ、コラムをお届けします。

-チョココラム
-,