新しい命を授かったあなたへ。妊娠おめでとうございます。
今、あなたのお腹の中では、小さな命がものすごいスピードで成長しています。「ちゃんと育ってるかな?」「私の食事、これで大丈夫?」と不安になることもありますよね。
特に初めての妊娠だと、ネット上の「あれはダメ、これは良い」という情報に疲れてしまうこともあると思います。
でも、安心してください。妊娠生活は約10ヶ月。体調が良い日もあれば、お水さえ飲むのが辛い日もあります。
この記事は、そんなあなたが「これだけ読んでおけば大丈夫!」と安心できるよう、専門的な話をわかりやすくまとめました。
まずは、出産までの全体像を見てみましょう。
妊娠期間は「初期」「中期」「後期」の3つに分かれます。時期によって、赤ちゃんが必要とする栄養や、あなたの体の変化は大きく変わります。
以下の表で、これからの流れをざっくり予習しておきましょう。
| ステージ | 時期 | 赤ちゃんの様子 | ママの体の変化 | 特に意識したい栄養素 | カロリー(増やす量) |
| 妊娠初期 | 0〜15週 | 【体の基礎作り】 脳や心臓など、生きるための重要な部分が作られる時期。 | 【つわり】 ホルモンの影響で吐き気や食欲不振に。無理せず過ごす時期。 | 【葉酸】 赤ちゃんの脳や脊髄を作るのに絶対必要。 目安:食事+サプリ | +50 kcal (ほぼ増やさなくてOK。 食べられるものを食べる) |
| 妊娠中期 | 16〜27週 | 【体が大きくなる】 骨や筋肉が発達。胎動を感じ始める。 | 【安定期・貧血】 赤ちゃんに栄養を運ぶため、血液の量が増えて血が薄まりやすい。 | 【鉄分】 貧血予防に必須。 目安:初期よりかなり多めに意識 | +250 kcal (おにぎり1個+果物くらい。 栄養あるものをチョイス) |
| 妊娠後期 | 28週〜 | 【ラストスパート】 体が丸くなり、骨が硬くなる。脳のシワも増える。 | 【お腹が重い】 胃が圧迫されて一度に食べられない。むくみや高血圧に注意。 | 【カルシウム・減塩】 赤ちゃんの骨作りと、高血圧予防。 目安:塩分控えめに | +450 kcal (しっかり増やす必要があるけど、 油っこいものは避けて) |
この表を地図代わりにして、焦らず進んでいきましょう。
それでは、具体的な食べ物の話をしていきますね。
1. 妊娠全期間を通して意識したい「ベースの栄養」

時期ごとの話に入る前に、妊娠中ずっと(そして産後も)大切にしてほしい「食事の基本」をお話しします。
サプリも大事ですが、まずは毎日の食事が赤ちゃんの体を作る材料になります。
お腹の赤ちゃんを作る「タンパク質」
人間の体は、水分を除くとほとんどがタンパク質でできています。
筋肉、皮膚、髪の毛、血液……これらはすべてタンパク質。お腹の中でどんどん大きくなる赤ちゃんにとって、タンパク質は「体を作るブロック」のようなものです。
【質の良いタンパク質を選ぼう】
タンパク質なら何でも良いわけではありません。「アミノ酸スコア」といって、体の中で効率よく使われる「質の良い」ものを選びましょう。
- 肉類(赤身がおすすめ): 牛、豚、鶏。脂身たっぷりのお肉より、ヒレやモモなどの赤身や、鶏ムネ肉がおすすめ。カロリーを抑えつつ、鉄分も摂れます。
- 魚介類(DHAたっぷり): サケ、アジ、サバなど。赤ちゃんの脳の発達に良いDHAが含まれています。
- 大豆製品(畑の肉): 豆腐、納豆、豆乳。脂質が低くてヘルシー。つわりでお肉が辛い時も、冷奴なら食べやすいですよ。
- 卵(完全栄養食):冷蔵庫の常備薬。朝ごはんに目玉焼きやゆで卵をプラスするだけでOK。
【量の目安】
毎食、「自分の片手のひらサイズ」くらいの主菜(肉・魚・豆腐など)を食べるのが目標です。
母体の健康を守る「ビタミン・ミネラル」
タンパク質が「材料」なら、ビタミンやミネラルは「大工さん」や「潤滑油」です。材料だけあっても、大工さんがいないと家(赤ちゃんの体)は建ちません。
特に意識してほしいのが野菜です。
野菜には、便秘を防ぐ「食物繊維」、風邪を防ぐ「ビタミンC」、そして赤ちゃんの成長を助ける「葉酸」がたっぷり。
- 緑黄色野菜: ほうれん草、ブロッコリー、トマトなど。(栄養たっぷり)
- 淡色野菜: キャベツ、玉ねぎ、大根など。(カサ増しに便利)
【忙しい時の裏技】
サラダで大量に食べるのは大変だし、体を冷やします。おすすめは「具だくさんの味噌汁」。加熱するとカサが減ってたくさん食べられるし、溶け出した栄養も汁ごと飲めます。
妊娠中に避けるべき食べ物・飲み物リスト
妊娠中は免疫力が下がっているので、普段は平気な菌でも食中毒になりやすいです。また、赤ちゃんに悪影響があるものもあります。
「絶対にダメなもの」と「量に気をつけるもの」をしっかり分けましょう。
1. 【NG】食中毒が怖いので避けるもの(加熱すればOK)
これらは、流産や赤ちゃんへの深刻なダメージにつながる菌がいる可能性があります。生では食べないでください。
- ナチュラルチーズ(加熱してないもの): カマンベール、ブルーチーズなど。
リステリア菌という、冷蔵庫でも増える菌がいるかも。食べるならピザなど加熱する料理で。プロセスチーズはOKです。 - 生肉: ユッケ、馬刺し、レアステーキ、生ハム、サラミ。
トキソプラズマという寄生虫が心配。お肉はしっかり焼きましょう。 - 生卵: 卵かけご飯など。
サルモネラ菌による食中毒のリスク。半熟も避けて、固茹でや卵焼きにしましょう。
2. 【注意】量を控えめにするもの
完全に禁止ではありませんが、食べ過ぎに注意が必要です。
- 大型の魚(マグロなど): 食物連鎖の上位にいる魚は「水銀」を体内に溜めています。
- 控えめに: 金目鯛、メカジキ、本マグロなど(週1回・切り身1切れ程度に)。
- 食べてOK: サケ、アジ、サバ、ツナ缶、カツオなど(これらは栄養豊富なので積極的に!)。
- レバー・うなぎ:「ビタミンA」が多すぎると、初期の赤ちゃんに影響する可能性があります。初期は毎日食べるのはやめて、週1回程度に。
- カフェイン: コーヒーなら1日1〜2杯まで。最近は美味しいデカフェ(カフェインレス)も多いので活用しましょう。
- アルコール: これは全期間NGです。 「少しなら」もダメ。ノンアルコール飲料で気分転換を。
2. 【妊娠初期】(〜15週)赤ちゃんの基礎づくりとつわり対策

妊娠が分かったばかりのこの時期。赤ちゃんはタツノオトシゴのような形から、人間らしい姿へと急速に変身しています。脳や心臓を作る、一番大事な基礎を作る期間です。
妊娠初期に一番大事なのは「葉酸」
この時期、サプリを使ってでも絶対に摂ってほしいのが「葉酸(ようさん)」です。
葉酸は、赤ちゃんの脳や脊髄(背骨の中の神経)が正しく作られるのを助ける栄養素です。
もし葉酸が足りないと、「神経管閉鎖障害」という先天性の異常が起きるリスクが高まってしまいます。
厚生労働省も、「食事に加えて、サプリで1日400μgの葉酸を摂ること」を強くすすめています。
葉酸が多い食材ランキング
サプリだけでなく、食事でも意識してみましょう。
| 順位 | 食材 | ここがポイント |
| 1位 | 焼きのり | 実はトップクラス。朝ごはんに数枚食べるだけでOK。つわりでも食べやすい! |
| 2位 | 枝豆 | 冷凍庫に常備。解凍するだけでパクパク食べられます。 |
| 3位 | モロヘイヤ | スープにすると、溶け出した葉酸も逃さず摂れます。 |
| 4位 | ブロッコリー | ビタミンCも豊富。冷凍ブロッコリーが便利。 |
| 5位 | いちご | 洗うだけで食べられるし、酸味があってつわりの時にも嬉しい。 |
【調理のコツ】
葉酸は熱や水に弱いです。茹でるとお湯に逃げてしまうので、電子レンジで加熱したり、スープにして汁ごと飲んだりするのがおすすめです。
つわりで食べられない時は?
「栄養を摂らなきゃいけないのに、気持ち悪くて食べられない…」
そんな自分を責めないでください。
結論:「今は食べられなくても大丈夫」です。
赤ちゃんはまだ小さく、卵黄嚢(らんおうのう)という専用のお弁当箱を持っているので、ママが少しの間食べられなくてもちゃんと育ちます。
今は「栄養バランス」より「脱水にならないこと」が最優先です。
【つわりを乗り切るコツ】
- 分食する: 空腹になると気持ち悪くなる人は、おにぎりやクラッカーをちょこちょこ食べましょう。
- 温度を下げる: ご飯の湯気がダメな人は多いです。冷たいおにぎりやサンドイッチ、冷やしそうめんなら食べられるかも。
- 「神食」を見つける: 「これなら食べられる!」というもの(フライドポテトやトマト、ゼリーなど)があれば、今はそれだけでもOKです。
【つわりに効くかも?】
ビタミンB6がつわりを軽くすると言われています。「バナナ」にはビタミンB6が含まれていて、手軽に食べられるので枕元に置いておくのもおすすめです。
つわりの味方! コンビニ活用術
料理なんてできない!という時は、コンビニに頼りましょう。
- さっぱり系: カリカリ梅、レモン味のゼリー、カットフルーツ(パインやグレープフルーツ)。
- 飲みやすい: 飲むヨーグルト、ゼリー飲料、冷たいお蕎麦。
- 手軽に: 梅おにぎり、サンドイッチ、蒸しパン(油が少なくて胃に優しい)。
3. 【妊娠中期】(16〜27週)貧血と便秘に注意

つわりが落ち着いて「安定期」に入ります。食欲も戻ってきますが、油断は禁物。
赤ちゃんに栄養を届けるため、ママの体では血液の量がものすごく増えます。
貧血予防には「鉄分」
血液の量は増えますが、その成分(赤血球)の生産が追いつかず、血が薄まった状態になりがちです。
しかも、赤ちゃんは自分の血を作るために、ママから鉄分をどんどん持っていきます。
ママがフラフラにならないように、鉄分補給が必須です。
【効率よく鉄分を摂るコツ】
鉄分には「吸収されやすい肉・魚の鉄」と「吸収されにくい野菜の鉄」があります。
- 吸収されやすい(ヘム鉄): 赤身のお肉、カツオ、マグロ、アサリなど。
これをメインのおかずにしましょう。 - 吸収されにくい(非ヘム鉄): 小松菜、納豆、卵、ひじきなど。
これらは、ビタミンC(野菜や果物)やタンパク質と一緒に食べると、吸収率がアップします。
【レバーは食べ過ぎ注意】
「貧血にはレバー」ですが、前述の通りビタミンAが多いので、週1回・焼き鳥1〜2本くらいにしておきましょう。
普段は「アサリの水煮缶」や「カツオのたたき」、「赤身のお肉」で鉄分をチャージするのがおすすめです。
便秘対策には「食物繊維」
子宮が大きくなって腸を圧迫するので、便秘になりやすくなります。食物繊維を意識しましょう。
- カサを増やす: さつまいも、豆類、きのこ。
- 便を柔らかくする: わかめ、果物、オクラ、もち麦。
- 便が硬い時は、わかめや果物を多めに摂るとスルッと出やすくなります。
体重管理と「質の良い脂質」
食欲が出て太りやすい時期ですが、極端なダイエットはNGです。
揚げ物やスナック菓子などの「悪い油」を控えて、魚の油(DHA)やオリーブオイルなどの「良い油」を摂りましょう。
4. 【妊娠後期】(28週〜)ラストスパートと高血圧予防

いよいよ出産へ向けたラストスパート。赤ちゃんは急成長し、骨を硬くしていきます。
ママは胃が苦しくなったり、むくみやすくなったりします。
骨を作る「カルシウム」
赤ちゃんの骨を作るために、カルシウムがたくさん必要です。足りないと、ママの骨を溶かして赤ちゃんに送ってしまうので、ママの将来の骨や歯のためにもしっかり摂りましょう。
- 牛乳、ヨーグルト、チーズ: 吸収率が良いです。
- 小魚、納豆、小松菜: こちらも優秀。
【ビタミンDと一緒に!】
カルシウムは「ビタミンD」がないと吸収されません。ビタミンDはサケやキノコに多いです。日光を浴びることでも体内で作られるので、天気の良い日は少しお散歩しましょう。
高血圧を防ぐ「減塩」
後期に怖いのが「妊娠高血圧症候群」。血圧が上がって、お母さんも赤ちゃんも危険な状態になることがあります。
一番の予防は「塩分を控えること」。
- お出汁を活用: 鰹節などのうま味を使えば、薄味でも美味しいです。
- 「かける」より「つける」: 醤油は直接かけず、小皿に出して少しつけるだけに。
- 麺類の汁は残す: ラーメンやうどんの汁には塩分がたっぷり。全部飲むのは我慢!
出産に向けた「ビタミンK」と「分食」
出産時の出血を止めやすくするために、「ビタミンK」が大切です。
最強の食材は「納豆」。1日1パック食べるだけでOKです。
【胃が苦しい時は「分食」】
お腹が大きくなって胃が圧迫され、一度にたくさん食べられないことがあります。
そんな時は、1日の食事を5〜6回に分けましょう。
「朝ごはん・おやつ・昼ごはん・おやつ・夜ごはん」のように小分けにすれば、胃への負担も減り、体重も増えすぎにくくなります。
5. サプリメントはどうする?

「食事だけで完璧」は理想ですが、現実には難しいですよね。サプリは「お守り」として上手に使いましょう。
- 葉酸サプリ:
- 妊娠初期(〜13週頃): 必須です!飲み忘れずに。
- 中期以降: 飲んでもOK。葉酸には「血を作る」働きもあるので、貧血予防にもなります。
- 選び方:
- 「葉酸400μg」「鉄分」「カルシウム」が入っているものがおすすめ。
- 香料や保存料が入っていない、無添加のものだと安心です。
おわりに
ここまで読んで、「こんなに気をつけなきゃいけないの?」と不安になったかもしれません。
でも、大丈夫。完璧な食事をしている妊婦さんなんて、実はほとんどいません。
「昨日はアイスしか食べられなかったから、今日は野菜スープを飲もう」
「今日はお弁当だったから、明日の朝は納豆ご飯にしよう」
そんなふうに、「1週間くらいでバランスが取れてればいいや」くらいの気持ちで十分です。
ストレスを溜めないことが、赤ちゃんにとって一番の栄養です。
旦那さんにもこの記事を見せて、「今は鉄分が必要だから、お肉食べに行こう!」「便秘だからヨーグルト買ってきて」と甘えちゃいましょう。
あなたの妊娠生活が、少しでも笑顔で過ごせるものになりますように。
美味しいものを食べて、元気な赤ちゃんに会える日を楽しみに待ちましょう!
安産を心からお祈りしています。