妊娠中、無性にチョコレートが食べたくなる。でも、「赤ちゃんに影響はない?」「カフェインは大丈夫?」と、その一口をためらってしまう妊婦さんも多いのではないでしょうか。
この記事は、そんな妊婦さんの不安にお答えします。
結論からお伝えすると、妊娠中にチョコレートを食べてはいけない、ということはありません。適量であれば、リラックス効果など、むしろ妊婦さんにとって良い面もあります。
ただし、注意すべき点が3つあります。それは「時期(妊娠前期・中期・後期)」「量(1日何グラムまでか)」「種類(どのチョコレートを選ぶか)」です。妊娠時期によって、特に注意すべきリスクは異なります。
この記事では、産婦人科の観点から、なぜチョコレートに注意が必要なのか、時期別の具体的なリスク(カフェイン・糖質・ポリフェノール)と安全な適量、そして賢い選び方について、医学的根拠に基づいて徹底的に解説します。
なぜ注意が必要?妊娠中にチョコを食べすぎた時の3大リスク

まず、妊娠の全期間を通じて注意が必要な、チョコレートの含有成分と、過剰摂取による3つの主要なリスクについて解説します。
① カフェインの過剰摂取
チョコレートの原料であるカカオ豆にはカフェインが含まれています。カフェインは胎盤を通過し、胎児に移行します。
大人はカフェインを分解する酵素を持っていますが、胎児はその機能が未熟です。そのため、カフェインが胎児の体内に長時間とどまり、影響を与え続けてしまう可能性があります。
胎児の発育遅延(低体重)や早産、流産のリスク
カフェインには血管を収縮させる作用があります。これにより、子宮や胎盤への血流が一時的に減少し、胎児へ送られる酸素や栄養が不足する可能性が懸念されます。この結果、胎児の発育が妨げられ、低出生体重児(2,500g未満)のリスクや、妊娠初期の場合は流産のリスクが高まる可能性が指摘されています。
妊婦はカフェインの分解に時間がかかる
さらに、妊娠中は母体もホルモンの影響でカフェインの代謝(分解)速度が遅くなります。そのため、普段よりカフェインの影響が体内に残りやすく、胎児への影響も大きくなりやすいのです。
② 糖質・脂質の過剰摂取
チョコレート、特に市販のミルクチョコレートやホワイトチョコレートには、多くの糖質と脂質が含まれています。
急激な体重増加
つわりが治まった後などは、チョコレートの甘さが美味しく、つい食べ過ぎてしまいがちです。しかし、高カロリーなチョコレートの習慣的な摂取は、急激な体重増加の大きな原因となります。
妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群のリスク
過度な糖質・脂質の摂取は、血糖値のコントロールを難しくし、「妊娠糖尿病」のリスクを高めます。また、急激な体重増加は「妊娠高血圧症候群」のリスク因子でもあり、これらは母体と胎児の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ただし、ある研究では、1日に25g以下のチョコレート摂取は、カカオポリフェノールのインスリン抵抗性改善効果により、むしろ妊娠糖尿病のリスクを下げる可能性も示唆されています。重要なのは、あくまで「適量」を守ることであり、「食べ過ぎ」は明確なリスクとなります。
③ カカオポリフェノールの過剰摂取(※特に後期)
「健康に良い」とされるカカオポリフェノールですが、妊娠後期(特に妊娠28週以降)の過剰摂取には、最も注意が必要です。
【要注意】妊娠後期は胎児の動脈管早期収縮(心臓への影響)のリスクが報告されている
近年、ポリフェノールの過剰摂取が、胎児の心臓の重要な血管である「動脈管」を、出生前に収縮させてしまう「胎児動脈管早期収縮」を引き起こす可能性が指摘されています。
胎児は肺呼吸をしていないため、心臓から肺動脈へ流れる血液を大動脈へ逃す「動脈管」というバイパス血管を持っています。この動脈管は、「プロスタグランジン」という体内物質によって開いた状態が保たれています。
カカオポリフェノールには、市販の鎮痛剤(NSAIDs)などと同様に、このプロスタグランジンの合成を阻害する(抑える)強い抗炎症作用があります。
妊娠後期にポリフェノールを過剰に摂取すると、この作用によって動脈管が収縮・閉鎖してしまい、胎児が肺高血圧や心不全を起こす危険性があるのです。実際に、妊娠34週以降に毎日ハイカカオチョコレートを摂取していたところ、胎児動脈管早期収縮が疑われたという症例も報告されています(2023年)。
【時期別】妊娠前期・中期・後期で異なるチョコレートの注意点

チョコレートのリスクは、妊娠時期によってその深刻度が変わります。ここでは、時期ごとに最も注意すべき点を解説します。
妊娠前期(初期)のチョコ:「カフェインによる流産リスク」に注意
妊娠前期(~妊娠13週6日)は、胎児の脳や心臓など、最も重要な器官が形成される非常にデリケートな時期です。
この時期は、3大リスクの中でも特に「カフェイン」による影響を最小限に抑えることが重要です。前述の通り、カフェインの血管収縮作用による胎盤への血流低下が、器官形成期の胎児への栄養・酸素供給を妨げ、流産のリスクを高める可能性が懸念されています。
つわり中に食べても平気?
つわりで食事がほとんど摂れない時、「チョコレートなら食べられる」という妊婦さんもいらっしゃいます。食事が摂れないよりは、食べられるものを少量でも口にする方が良いですが、その場合もカフェイン量が比較的少ないミルクチョコレートやホワイトチョコレートを選ぶなど、種類と量には配慮しましょう。
「気づかずに食べた」と不安な方へ
妊娠に気づく前に、うっかりチョコレートをたくさん食べてしまったと不安になる方もいるかもしれません。しかし、リスクが高まるのは「過剰摂取を継続した場合」です。世界保健機関(WHO)や英国食品基準庁(FSA)などが示すカフェインの許容量(1日 200mg~300mg)を大幅に超える量を連日摂取していたわけでなければ、過度に心配する必要はありません。
妊娠中期のチョコ:「糖質・脂質による体重管理」が最大の焦点
妊娠中期(妊娠14週0日~27週6日)は、いわゆる「安定期」に入り、つわりが落ち着き食欲が増す時期です。胎児も安定して成長しますが、同時に母体の体重が最も増えやすい時期でもあります。
この時期、注意の焦点は初期の「カフェイン」から、「糖質・脂質」による体重管理と血糖コントロールへと移ります。
安定期こそ油断禁物
食欲が戻った解放感から、チョコレートなどの甘いものを食べ過ぎてしまうと、急激な体重増加や妊娠糖尿病のリスクが高まります 4。
妊娠糖尿病を防ぐ食べ方
一方で、前述の研究のように、「1日25g程度」のチョコレート摂取は、ポリフェノールの効果でインスリン抵抗性を改善し、妊娠糖尿病のリスクを下げる可能性も示唆されています。
この時期は、「ゼロにする」のではなく、「1日25g(板チョコ半分弱)まで」とルールを決め、他の間食と置き換える形で、糖質が比較的少ないハイカカオチョコレートを少量摂る、といった「賢い食べ方」が推奨されます。
妊娠後期のチョコ:「ポリフェノールとカフェイン」の胎児への影響に最注意
妊娠後期(妊娠28週~)は、最も注意が必要な時期です。この時期は、「カカオポリフェノール」と「カフェイン」の2つのリスクに同時に注意を払う必要があります。
なぜ後期はポリフェノールに注意が必要?(胎児の心臓への影響)
最大の注意点は、前述した「胎児動脈管早期収縮」のリスクです。このリスクは、ポリフェノールがプロスタグランジンの合成を阻害することによって引き起こされます。この作用は、妊娠後期(特に28週以降)において問題となるため、健康志向でハイカカオチョコレートを習慣にしている妊婦さんは、特に注意が必要です。
カフェインが胎児の睡眠や貧血(鉄分吸収阻害)に与える影響
妊娠後期は、カフェインの代謝がさらに遅くなります。母体から胎児へ移行したカフェインの覚醒作用が、胎児の睡眠・覚醒のリズムを乱してしまう可能性があります。
また、カフェインは鉄分の吸収を阻害します。妊娠後期は、胎児の成長と母体の血液量増加のために鉄分の需要がピークに達する時期です。貧血になりやすいこの時期にカフェインを摂ることは、鉄剤の効果を妨げ、貧血を助長するリスクがあります。
妊婦さんの「チョコ1日何個まで?」適量と種類の選び方

では、具体的に「1日何個まで」なら安全なのでしょうか。
1日の目安は「板チョコ半分」まで(カフェイン摂取許容量200mgから逆算)
妊娠糖尿病のリスク研究やポリフェノールの適量に関する研究など、多くの医学的知見を総合すると、安全な摂取量の目安は「1日25g」とされています。
市販の板チョコレートは1枚あたり約50g~55gのものが多いため、「板チョコ半分」がこの25gとほぼ一致します。
この「25g」という量は、カフェインの観点からも安全です。仮にカフェインが最も多いハイカカオチョコレート(100gあたり約90mg)であっても、25gならカフェインは約22.5mgです。
コーヒーやお茶など、他の飲み物との合計で考える
妊婦のカフェイン摂取許容量の目安は、国際的な基準で1日200mgとされています。この200mgというのは「総量」です。
例えば、コーヒーを1杯(約120mg)、緑茶を1杯(約30mg)飲む日は、それだけで合計150mgになります。その日にチョコレートを食べると200mgを超えてしまう可能性があるため、コーヒーを飲む日はチョコを控える、またはカフェインゼロのホワイトチョコにする、といった調整が必要です。
チョコレートの種類別カフェイン含有量(一覧表)
| チョコレートの種類 | カフェイン含有量(100gあたり目安) |
| ホワイトチョコレート | 0mg |
| ミルクチョコレート | 約 15mg~20mg |
| ダーク (ハイカカオ 70%台) | 約 80mg~90mg |
| ダーク (ハイカカオ 90%台) | 100mg以上(カカオ分に比例) |
賢い選び方:ハイカカオ・ミルク・ホワイト、どれがいい?
どのチョコレートが「最適」かは、妊娠時期によって異なります。リスクとメリットを天秤にかけて選びましょう。
ハイカカオ:糖質は低いが「カフェイン」「ポリフェノール」が最多
- メリット: 糖質・脂質が少ないため、体重管理が重要な「妊娠中期」には適しています。
- デメリット: カフェインとポリフェノールが全種類の中で最も多いです。
- 結論: 「妊娠後期」は胎児動脈管収縮のリスクがあるため、摂取は避けるべきです。
ミルク:カフェインは少なめだが「糖質・脂質」が多い
- メリット: カフェインとポリフェノールの含有量が少ないため、前期・後期のリスクを低減できます。
- デメリット: 糖質・脂質が多いため、体重増加や妊娠糖尿病のリスクに注意が必要です。
- 結論: 「妊娠前期」や「妊娠後期」に、1日25g以下の範囲で楽しむのに適しています。
ホワイト:カフェインゼロだが「糖質・脂質」が最多
- メリット: 原料にカカオマスを含まないため、カフェインゼロ、ポリフェノールもゼロです。
- デメリット: 糖質・脂質が最も多いため、体重管理には最も不向きです。
- 結論: 「妊娠後期」に動脈管のリスクを完全に避けたい場合や、コーヒーを飲んだ日の「カフェイン調整」として最適です。
【早見表】妊娠時期別・チョコレートの賢い選び方
| 時期 | 最も注意すべきリスク | 推奨(◎) | 注意(△) | 非推奨(×) |
| 前期(初期) | カフェイン(流産) | ホワイト, ミルク | ダーク | (特になし) |
| 中期 | 糖質・脂質(体重) | ダーク (25gまで) | ミルク | ホワイト |
| 後期 | ポリフェノール(心臓)カフェイン | ホワイト | ミルク | ダーク(ハイカカオ) |
不安だけじゃない!妊娠中にチョコを食べる3つのメリット

ここまでリスクを中心に解説してきましたが、適量を守れば、チョコレートには妊婦さんにとって嬉しいメリットもあります。
① リラックス効果(テオブロミン)
チョコレートに含まれる「テオブロミン」という成分には、自律神経を調節する作用があり、リラックス効果が期待できます。妊娠中の不安やストレスを和らげる一助となるでしょう。
② 鉄分や食物繊維の補給
カカオには、妊娠中に不足しがちな鉄分や、便秘解消に役立つ食物繊維が含まれています。ミルクチョコレート100gあたりでも3.9gの食物繊維が含まれており、ハイカカオチョコレートにはさらに豊富に含まれています。
③ 血圧を下げる効果(カカオポリフェノール ※適量の場合)
カカオポリフェノールには、血管に働きかけて血圧を下げる効果が期待されています。これは、妊娠高血圧症候群の予防にもつながる可能性があります。
ただし、この「血管への作用」こそが、妊娠後期には胎児の動脈管収縮リスクと表裏一体です。メリットが期待できるのは、あくまで「適量(1日25g程度)」であり、「妊娠中期まで」と考えるのが賢明です。
妊娠中のチョコレートは「時期」と「量」を守って賢く楽しもう
最後に、この記事の要点をまとめます。
妊娠時期別の注意点おさらい(前期・中期・後期)
- 妊娠前期(初期): 「カフェイン」による流産リスクに注意。1日の総摂取量を200mg未満に。
- 妊娠中期: 「糖質・脂質」による体重・血糖管理を最優先に。この時期のみ、適量(25g以下)のハイカカオはメリットも。
- 妊娠後期: 最も注意が必要。ハイカカオチョコレートは避ける。「ポリフェノール」による胎児の心臓への影響(動脈管早期収縮)と、「カフェイン」のリスクに警戒。
ストレスを溜めないことが一番!上手に取り入れるコツ
「絶対に食べてはダメ」と我慢しすぎることが、かえってストレスになることもあります。ストレスは母体にも胎児にも良くありません。
大切なのは、リスクを正しく理解することです。「時期」に合わせて「種類」を選び、「1日25g(板チョコ半分)まで」という「量」を守る。このルールさえ守れば、妊娠中でもチョコレートを安全に楽しむことは十分可能です。
妊娠中にチョコレートが食べたくなったらこれがおすすめ!
妊婦さんにはメリットもデメリットもあるチョコレート。赤ちゃんへの影響も考えて、なるべく安心できるものを選びたいですよね。
そんな方には、私たちが作っているandewホワイトチョコレートがおすすめです。

andewが初めて作ったホワイトチョコレート。ひとくちで、ミルクのリッチなコクとまろやかな甘みがふわりと香ります。
このandewホワイトチョコレートには、妊娠中に嬉しい3つのポイントがあります。
①ノンカフェイン
パクパク食べるとすぐにカフェインの基準量を上回ってしまう…なんて話もありましたが、andewホワイトチョコレートはノンカフェイン。コーヒーや紅茶と一緒に食べてリラックスする時にも安心です。
② 豊富な栄養
andewの他商品同様、完全栄養食を実現するためにカカオ、アーモンド、チアシード、きなこ、ココナツ、ケシの実、昆布、抹茶など、栄養豊富な素材を絶妙なバランスで組み合わせました。
③ 妊娠中の友達へのプレゼントにも
丁寧に梱包し、パンフレットとメッセージカードとともにお届けします。領収書などお値段のわかる書面は同封しませんので、贈り物にぴったりです。
妊娠中のご褒美に、ぜひお試しください!
参考
- 妊婦がカフェインを控えるべき理由 - 新型出生前診断 NIPT Japan
- 妊娠中はカフェインNGって本当?妊婦さんがカフェインを控えるべき理由
- 妊娠中のカフェイン摂取の母児への影響 (公衆衛生 80巻9号) | 医書.jp
- チョコレートは妊娠中に食べてもよい?摂取時の注意点やメリットも紹介 - バニラビーンズ
- チョコレート摂取量と妊娠糖尿病発症リスクについて
- Increase of prostaglandin E2 in the reversal of fetal ductal constriction after polyphenol restriction - PubMed
- Prenatal Effects of Maternal Consumption of Polyphenol-Rich Foods in Late Pregnancy upon Fetal Ductus Arteriosus - PMC - NIH
- Maternal Daily Intake of Polyphenol-Rich Dark Chocolate and Premature Closure of Ductus Arteriosus
- チョコレートの長期多量摂取が原因として疑われた胎児動脈管早期収縮の1例
- 妊娠初期のカフェイン摂取は大丈夫?胎児への影響と知っておくべきこと
- チョコレートに含まれるカフェインの含有量とは?影響についても解説 - バニラビーンズ
- チョコレートには血圧を下げる効果が?カカオポリフェノールの作用や適量を深掘り!
- カカオポリフェノール 健康だより 2月号 - 東広島記念病院
- 妊娠中にカフェインを飲むとどうなる?安全な量とリスク - DNAサイエンス
- 妊娠・授乳中、カフェインってどこまでOK? | つながる薬局ナビ
- 板チョコのグラム数や溝の秘密!簡単レシピや板チョコアイスもご紹介! - SweetsVillage(スイーツビレッジ)
- 妊婦の方やお子さんは カフェインの摂り過ぎに注意しましょう!
- ホワイトチョコレートカフェイン - スイーツモール
- 知らなかった!チョコレートの効果 | お知らせ - 神戸徳洲会病院